近年の脳科学の進展により、私たちは“心”を単なる抽象的な内的世界としてではなく、“脳”という具体的な外的世界の一部として捉えることが可能になってきました。心の問題について、このような現実的な視点からのアプローチが可能になったことは、非常に価値ある進歩です。
脳を中心とした心の理解においては、“魂”や唯物論に偏らず、内的世界と外的世界の統合を受け入れるバランスの取れた視点が重要です。脳科学の情報を盲信することなく、人間の心が持つ神秘的で不可思議な側面も認識し続ける必要があります。
ニューロン(神経細胞)という物質から生まれる精神や心という主観的な世界を理解するためには、新たな概念が必要です。重力のように直接知覚できないものの作用を理解することが可能であるように、脳細胞から生じる心の働きを受け入れることが、未知の世界への理解を深める一歩となります。
しかし、この理解が進展するまで待っているだけでは、人生は過ぎ去ってしまいます。現実に経験している現象や理解可能な現象を受け入れつつ、神秘的に思える現象も含めて、これらを積極的に人生に取り入れることが重要です。環境やトラウマによって影響を受けた内的世界(無意識)を、催眠療法や自己催眠を用いて効果的に修正し、自己の内部に潜む潜在能力を開発し活用することで、人生に新たな方向性を見いだし、外的世界をより豊かに体験することができると考えます。