人間の脳は、大きく3つに分類します。
新皮質古皮質旧皮質とも呼びます)
 脳はそれぞれの部分が密接にネットワークを形成している複雑な器官です。


・・大脳皮質(新皮質)(だいのうひしつ)


 大脳半球は、右脳と左脳の二つが脳梁(のうりょう)と呼ばれる神経線維によって繋がっています。
 大脳半球の表面は、4つの葉(よう)に分かれた皮質によって覆われ、表面からは見えない重要な器官もその内側にあります。
 ご存知のように脳の表面は、溝(こう)と回(かい)と呼ばれる凹凸があり、それらによって広い表面積を作り出しています。
 大脳皮質は脳の表面を取り巻く神経細胞と神経線維でできていて、はっきりと色の違いがあります。
 脳の皮質表面は半透明の薄い肌色に似たピンク色をしています。(生きている脳の場合)
その表面からわずか1.5~4.5mm程が脳神経細胞の場所で、一般には灰白色と表現されます。それより深い部分は神経線維です。神経線維の部分は、脂肪で包まれているために白い色をしています。白色と表現されます。
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Ⅱ・・・大脳辺縁系 (だいのうへんえんけい) 



 大脳辺縁系は大脳半球の中の中心部分の臓器です。人の喜怒哀楽などを作り出している重要な領域です。皮質の内側の一部も含まれ内に接しています。これらの部分は、核(かく)と呼ばれる神経細胞の集まった領域です。大脳皮質(表面)の神経細胞とは神経線維で繋がっています。
 大脳辺縁系は、扁桃体、海馬、帯状回、脳弓、乳頭体、中隔などで構成されます。
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Ⅲ・・・大脳基底核、脳幹 (だいのうきていかく、のうかん)


 大脳基底核、脳幹は脊髄の上の部分に位置した脳です。詳しくはLinkIcon



脳基底核は、尾状核、被殻、淡蒼球、黒質、視床下核などで構成されます。
*尾状核と被殻を合わせて線条体と呼ぶ。
*被殻と淡蒼球を合わせてレンズ核と呼ぶ。 (淡蒼球は被殻の裏側にある)



脳幹(のうかん)は、間脳、中脳、延髄(脊髄につながる)をまとめた呼び名です。

 この間脳の部分には、視床視床下部という重要な神経核の集まりがあります。





脳幹全体は運動を調節する働きや、本能行動や自律神経や内分泌といった重要な働きの器官です。



延髄は中脳から脊髄に移る部分で、自律神経の核が存在しています。
 自律神経の核は内臓の様々な器官の働きを調節する機能を果たします。
 内臓の器官には、生命維持と深く結びついた呼吸循環系も含まれており、延髄が傷を負うと死に直結します。



小脳は身体のバランスをコントロールしています。そのために、小脳からは神経線維の束が出ており、間脳、中脳、脊髄と連絡し、運動機能のコントロールに重要な役割を担っています。小脳は中脳と延髄の背中の部分に位置し、脳全体の10%です。







***生きている脳は、このように手の平に乗せた時には形が崩れてしまいます。
柔らかいプリンのように自分の重さで壊れやすいものです。

成分の実に80%は水分である脳は、約1.4Kgもあります。(水分を除けば、脳の70%は脂肪でできています)LinkIcon
しかし、頭蓋骨の中で、脳脊髄液に浮かんでいることで、実質的な重さは浮力の働きで60g程度にまで減り、頭蓋骨の底面で崩れることなく丸っこい形を保つことができています。




 脳幹のうち、間脳は大脳半球に包まれ、食欲、繁殖欲、睡眠欲などの三欲や排泄欲、集団欲など生きていく上で必要な本能的行動を制御しています。

間脳には視床や視床下部といわれる重要な構造物があります。
視床も左右2つあり、卵が2つ並んだような形をしています。


視床:様々な感覚情報の中継基地であり、不随意運動に関する神経細胞の群れがあります。


視床下部:本能的な行動を支配する中枢が控え、様々な機能のバランスを巧みに調節しています。別名「生命中枢」


中脳は視床の下に位置し、歩行などの運動のバランスをコントロールし、目の瞳孔の調整もしています。大脳半球と脊髄とを結ぶ情報の中継場所です。
反射性の機能を調節する多くの神経核が存在しています。


延髄は自律神経の調整、呼吸、血液循環、排泄、発汗など



脳の断面図は、どのように切り取るかによって見え方が変わってきます。
また内部の構造も、切り取る部分で見えたり見えなかったりしますが、脳を立体的にとらえて欲しいと思います。










脳は頭蓋骨という骨の中に入っており、最も保護された器官といえます。


脳の図解 Ⅱで、脳は頭蓋骨の中で脳脊髄液に浮かんでいると説明しました、その
脳脊髄液についてもう少し説明します。


脳の皮質(中枢神経)は3枚の髄膜に覆われています。
最も外側が、硬膜(頭蓋骨内側の丈夫な膜)
間に、クモ膜クモ膜下腔(蜘蛛の巣のように見える)
最も内側が、軟膜(脳の表面に付着している)です。


ここで重要なのが、クモ膜下腔(くもまくかこう)です。
クモ膜下出血とかよく耳にされると思いますが、クモ膜と軟膜の間に存在するスペースには、多数の太い血管脳脊髄液を含んでいます。ここの血管が何らかの原因で破裂するとクモ膜下出血といわれます。


ここでぜひ知って頂きたいことは、二つあります。
1つは、血液脳関門です。ここの血管は、血液から脳内に多くの毒物などが侵入しないような仕組みになっています。血管壁の細胞が強固に結合しているのです。
私たちの脳内には、セロトニンと呼ばれる脳内伝達物質が必要です。
しかし、セロトニンを飲んでも注射しても脳は外部からのセロトニンを脳内には取り込みません。
脳内に取り込めるアミノ酸は、セロトニンの前駆体であるトリプトファンというタンパク質です。
このトリプトファンが脳内でセロトニンになるのです。


もう1つは、脳脊髄液です。この液体が脳を頭蓋骨の中で浮かべています。
脳脊髄液は、くも膜下腔、脳室、脊髄の中心管を満たしています。


脳室は、脳内に4つあります。 2つの側脳室、第三脳室、第四脳室です。

脳内の4つの脳室、くも膜下腔、そして脊髄中心管が互いに繋がって1つの貯水槽を作っています。
その貯水槽を満たす脳脊髄液によって脳は保護され、その浮力によって頭蓋骨の中で浮いています。
脳脊髄液を作っている場所は、脳室内面の脈絡叢で持続的に生産され、余分な脳脊髄液はくも膜下から静脈洞(硬膜の中を走っている血液に満たされた大きなスペース)に吸収され頚静脈に注いでいます。
頭部の静脈は、四肢の静脈と異なり、ほとんどが独立して走行しており、動脈を取り囲むような伴行静脈はありません。頭部の静脈には血液の逆流を防ぐ弁がないのも特徴です。











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