不安・恐怖体験の克服


人々は予期不安、つまり「また同じようなことが起こるのでは」という不安を乗り越えるのに苦労します。心に刻まれた怒りや恐怖、不安は容易には離れていきません。日常生活では忘れているように思えても、何かがきっかけで過去の苦痛な感情が呼び戻されることがあります。

では、これらの苦痛な感情や精神的な苦痛をどうやって克服できるでしょうか?例えば、パニック障害の方々は、再び症状が現れることを絶えず恐れています。他の心の病を抱える人々も同様に、症状の再発を恐れて苦しんでいます。

理想的には、このような不安が生じないようにすることですが、現実には多くの人がこれを実現できずに悩んでいます。

最近、ネット上で「恐怖や不安を克服する脳細胞発見」という興味深い記事が流れました。

ニュージャージー州ラトガース大学の神経科学者、デニス・パレ氏の研究チームは、脳細胞を選択的に除去する手法を用いて、「インターカレート(ITC) ニューロン」と呼ばれる細胞が恐怖の克服に欠かせない部分であることを突き止めた。「研究データによると、恐怖感を忘れるのではなく、特定の状況で恐怖に つながる刺激を受けても、恐れないようにすることを学習している」とパレ氏は言う。
といった記事です。

この発見は、ITCニューロンを活性化させることで、人々が恐怖や予期不安を克服できる可能性を示唆しています。
これまでの私の催眠療法による経験では、PTSDなど条件付けされた恐怖や予期不安を克服することができましたが、それがITCニューロンが正常な働きに戻ったことによるものである可能性があります。

今後、このITCニューロンの働きを活性化させる薬が発見されることが期待されます。そのような発展があれば、不安に苦しむ多くの人々を救うことができるでしょう。しかしながら、現段階では今後の研究を待つしかありません。

何度も同じ経験を繰り返すことにより、脳内ではその経験に関連する回路の痕跡が強化され、固定されます。その結果、同じ刺激を受けると即座に該当する回路が活性化し、過去の恐怖体験や苦痛が再現されます。このような反射的な反応は、現実に体験しなくても、単に想像するだけで起こり得ます。これは、人に備わっている条件反射機能によるものです。
不安や恐怖を克服するためには、まず心理療法を通じて、症状の発生原因を理性で理解することが重要です。この理解により、どうしてそのような反応が起きるのかを理解することができます。
さらに、脳内に形成された条件回路の使用を避けるためのアプローチとして、催眠療法が非常に有効です。薬物療法や脳への物理的な治療に頼ることなく、心理療法と催眠療法の組み合わせにより、心(脳の不調)の改善が可能です。